臨死体験

臨死体験は案外よく聞く話です。めったに起こらないのに何故かよく聞きます。
そして僕もその一人。
学生の頃です。大学で非常にハードなスケジュールをこなし、とうとう倒れます。
その時救急車で運ばれたのですが病名が急性気管支喘息。いわゆる息が出来なくなるやつ。
小児喘息と違いそこそこ死亡率が高いそうです。

救急車で運ばれた病院で処置を施され一応安定。
と、突然またもや発作。本格的に息が出来ません。
こんな苦しいなら気を失った方が・・・と思った瞬間意識が肉体から離れました。
俗に言う幽体離脱です。視界は天井から自分を見下ろしています。
苦しくは有りませんが、肉体は苦しそうにもがいています。
視界は僕の肉体から徐々に遠ざかる様に上昇しています。完全に傍観していました。隣にいた患者さんがベッドから転げ落ち後ずさりしています。看護婦や医師がかけつけ肉体を押さえつけます。
もがき苦しむ肉体があまりに格好悪かった。
「こんなに格好悪いもんなんだ。このまま死んだら格好悪いなぁ」と思った瞬間、
意識は肉体に戻っていました。ただ苦しみや痛みは感じませんでしたが。

その病院では処置が出来ないと判断され再び救急車で大学病院に移送されます。
移送される救急車の中での意識は断片的で苦しくは無かったです。
気付いたら大学病院のICUの処置室の様な所で僕は丸裸にされていくつかの検査器具を付けられ横たわっていました。
医師が僕を触診しています。人工呼吸器も用意されています。
ペンライトで瞳孔検査され『まぶしい~』と感じるも「反応弱い」と、医師のつぶやき。
オイオイ、意識は完璧しっかりしてるのに・・・
そう、体が反応しない状態。力も入らないし視線を変える事も出来ない。
多分僕の物であろう心電図の音が聞こえていました。
「親族と連絡は取れ無いのか?」と、奥から声が聞こえます。「今夜だな」と。
『まじっすか?僕こんなに元気ですよー』と思いながら記憶はここで無くなっています。

目が覚めると何事も無かった様に元気元気でした。
「あと2時間で帰って来れなかったよ。強い薬を使用したのでしばらく退院は出来ないね。」と言われ
血中から薬物濃度が薄れるまで入院していました。

入院中は元気なので病院内を徘徊していたのですが気付いた事が1つ。
そこの病院はICUの看護士が本当に美女揃い。まるで冥土の土産にいい物見ておけと言わんばかり。
あくまで主観の話ですが、他の病院でもそんな事聞いた事があるような・・・

そんな初入院体験でした。
退院後「人という物は割と簡単に死ぬのだ」と感じました。
僕だけでなく、前ぶれも無く、突然やって来るものかもしれないと。